2026年7月22日(水)、赤坂インターシティコンファレンスにて「SAS Innovate on Tour Tokyo 2026」を開催いたしました。事前登録は721名、当日は522名の皆さまにご参加いただきました。

今年のテーマ:「AI活用」は意思決定の再設計である

データ活用、データ基盤の構築、生成AIの導入、AIエージェントの導入。多くの企業がこうした取り組みを進める一方で、期待した成果につながらないケースも少なくありません。「AI活用」という手段が目的化し、本来見直すべき業務プロセス、すなわち人がどう判断し、どう意思決定するかという仕組みそのものが問われないままになっているーこれが、SASとSASのお客様の間にある問題意識です。

価値を生み出すために必要なのは、データの統合ではなく、意思決定の統合です。従来の意思決定は局所化・サイロ化しがちで、そのような状況のままAIを既存のプロセスに当てはめるだけでは、成果は限定的で単純な効率化にとどまります。収益の最大化、そしてその前提となる顧客体験の最大化という原点に立ち返り、全社視点で価値提供を最適化すること。企業が商品を設計して消費者に情報を提供する従来の流れから、顧客起点のデータに応じて企業がビジネスモデルをフィットさせていく流れへ。AIを前提に新たなビジネスプロセスやサービスの在り方を設計し、非連続な変革につなげること。問われているのは、たとえば顧客中心の視点で、判断・意思決定のプロセスそのものを再設計する力です。

SASの信頼できるエージェンティックAIは、ガバナンスと説明可能性に裏打ちされた“根拠が追える意思決定”を可能にします。組織内外の知見とデータをつなぎ、価値創出とイノベーションを加速する。この一日は、そうした「意思決定の再設計」を軸に、オープニングセッション、Japan Keynote、ランチセッション、業界別ブレイクアウトセッション、Innovation Hubを通じて、さまざまな角度から掘り下げる場となりました。

オープニングセッション:信頼できる意思決定の土台

オープニングセッションでは、SAS本社のエグゼクティブ陣が登壇しました。意思決定を再設計するうえで欠かせない「信頼」「ガバナンス」「データ」「業界知見」という4つの土台が、それぞれの視点から語られました。

  • 人の創造力とAIが、価値創出へと結びつく瞬間 冒頭、AIは人間を置き換えるものではなく、人間の観察力や意思決定を拡張する技術であると説明され、エージェンティックAIの活用にはガバナンスとガードレールによる精度と再現性の確保が重要であると強調されました。具体例として、Epic GamesおよびGeorgia-Pacificと連携したデジタルツインの取り組みや、デンマークの医療機器滅菌サービス企業Sterilcentralにおけるコンピュータビジョンと合成データを活用した安全管理の事例が紹介されました。
  • イノベーションを加速するAIガバナンス 次に、SASは、AIガバナンスを「人間の判断力を組織全体に拡張する仕組み」と位置づけていることが示されました。IDCとの共同調査から世界の企業の46%がAIに対する“信頼のジレンマ”を抱えている現状が共有され、これを解決する新製品として「SAS AI Navigator」を紹介し、ガバナンスが責任あるAI活用を加速する基盤であることが示されました。
  • データから意思決定へ、全社規模で このパートでは、SAS Data Makerを用いた合成データ生成によりデータの偏りを解消し、不正取引の検知率を4%から53%まで引き上げた事例が紹介されました。また、RAGテクノロジーの製品 SAS Retrival Agent Manager やSASの意思決定管理プラットフォームである、SAS Intelligent Decisioning製品を組み合わせた、監査可能で説明可能な意思決定のデモや、ノルウェーの郵便・物流企業Posten BringにおけるSAS ViyaとMicrosoft Teamsを連携させたSAS Supply Chain Agentの事例も披露しました。
  • AIが変える各業界の今 最後に、いくつかの業界ユースケース~銀行・ヘルスケア・公共・スポーツなど各業界でのSASの活用事例を紹介しました。銀行業界では年間3,000億件を超える取引の意思決定を支援し8.1兆円以上の不正防止効果を生み出していること、カナダのScotiabankにおけるモデルリスク管理の効率化、製薬企業DompéによるSAS Viyaを活用した創薬プロセスの迅速化、米国ノースカロライナ州税務局における年間9億ドルの損失回避の事例などが語られ、さらにLiverpool FCとの戦略的パートナーシップによるファンエンゲージメント強化の取り組みも紹介されました。

Japan Keynote セッション:問いを立て、意思決定を再設計する

午後のJapan Keynoteは、まさに今年のテーマそのものである「意思決定の再設計」を正面から扱うセッションとなりました。多様なデータを活用した意思決定の実践アプローチ、人材育成や社外データの活用、先進企業の事例を通じて、持続的な成果創出のポイントを探りました。

AI時代に企業人に求められるのは、ツールを使いこなすスキルではなく、問いを立てる力、問いの解決方法をデザインする力、そして意思決定のプロセスを設計する力です。Japan Keynoteは、AI実装の現在地から課題を提起するセッション①、変革の具体的な実践を議論するセッション②、人材・データ・実装という3つの切り口でSASの取り組みを紹介するセッション③という流れで、このメッセージが一貫して伝えられました。

セッション① AI実装の現在地~真の成果創出に向けて~

アジア太平洋地域と日本におけるAI実装の現状を共有し、課題を提起するセッションとなりました。SAS Financial Services, Asia Pacific担当VPのウィルソン・ホー(Wilson Ho)氏と、SAS Japan 内山剛が登壇しました。ウィルソン・ホー氏は、SASが創立50周年を迎える中で一貫して「信頼できる意思決定」を支援してきたことを紹介し、アジア太平洋地域でAI投資が急速に進む今、重要なのは単なるAI導入ではなく、顧客・規制当局・社会から信頼される形でAIを活用することだと強調しました。

内山は、IDC調査をもとに日本企業のAI活用状況を紹介しました。日本はデータ基盤への投資や生成AIの活用では世界トップクラスに位置する一方、AIによるビジネス変革やインパクト創出という観点では十分な成果につながっていない現状を指摘。生成AIが既存業務の改善ツールとして導入されている一方で、業務そのものを再設計するエージェンティックAIの導入はまだ限定的であるとして、今後は既存業務の効率化にとどまらず、顧客体験や市場ニーズを起点に意思決定プロセスそのものを変革することが重要だと提言しました。

セッション② パネルディスカッション 「顧客体験の再設計~AIを契機とした変革の本質」

続くパネルディスカッションでは、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 専務執行役員 CDO 本山 智之 氏と、筑波大学システム情報系教授の岡田幸彦氏が登壇し、SAS Japan 嘉陽亜希子がモデレーターを務めました。「AIを既存業務に当てはめるだけでは、もう十分ではない」という問題意識のもと、AI活用を“手段”から“意思決定の再設計”へと視点を転換することを目指したセッションです。AIトランスフォーメーションとは、既存業務をAIで効率化することではなく、AIの存在を前提に事業・意思決定・顧客体験を再設計することであるーこの問題提起のもと、AIトランスフォーメーションに期待する効果・成果、AIエージェントや顧客接点データの多様化を前提にビジネスモデルを再設計するための「問い」の視点、求められる組織の役割や人のスキルの変化を論点に、変革の本質について議論が交わされました。

セッション③ SAS・お客様・パートナー様の最新の取り組み

SAS Japan 小林泉がナビゲーターを務め、意思決定を再設計する具体的な取り組みが3つ紹介されました。問いを立て、データのバイアスを考慮しながら、真実を推定し、説明可能な形で意思決定につなげるというプロセスは、データを活用した戦略的意思決定に不可欠です。人材、データ、実装という3つの切り口から、SASの取り組みを紹介しました。

1つ目は、次世代のデータサイエンス人材を育てるプログラム「SAS Japan Future Ready」です。SAS Japanの鈴木慎吾が、小中学生が自ら課題を設定し、データ分析や発表を通じて学ぶ取り組みを紹介しました。問いを立て、自らデータを集めて考える力ー意思決定の起点となる力を育てる試みです。

2つ目は、株式会社True Data 代表取締役社長の米倉裕之氏とSAS Japanの井上義成による「価格は『決める』から『設計する』時代へ ―データとAIが変える価格意思決定―」です。日本最大級のID-POSデータを保有するTrue Dataの購買データとSASのAI・分析技術を組み合わせ、価格改定による売上・利益への影響や競合状況、顧客行動の変化を事前にシミュレーションする。データは過去を説明するためだけでなく、未来を設計するためのツールへと進化している。自社のデータだけでなく、外部の客観的なデータも組み合わせることの意味を示すセッションとなりました。

3つ目は、SAS Japan 山口貴史による「SAS Japan Customer Value Award」の発表です。データとAIの活用を通じて価値創出を実現し、意思決定プロセスへの実務実装を果たしているお客様の取り組みを称える本年新設のアワードで、表彰式は、後述のネットワーキングセッションの中で行われました。

<SAS Japan Customer Value Award 2026>

  • SAS Customer Champion Award  SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
  • SAS Customer Champion Award  塩野義製薬株式会社
  • SAS Customer Champion Award トヨタファイナンス株式会社
  • SAS Data for Good Impact Award  株式会社りそなホールディングス
  • SAS Data & AI Innovation Award 塩野義製薬株式会社

詳細はこちらをご参照ください:SAS Japan Customer Value Award 2026 受賞企業を発表

ランチョンセッション:

昼休憩時間には、参加者それぞれの関心に応じて選択できる3つのプログラム、パートナーセッション、Snackable Tech NoonそしてWomen’s Initiative Networkが開催されました。参加者は、ランチをとりながらカジュアルな雰囲気の中、自身の好奇心をくすぐる新しい知見に触れることができました。

パートナーセッション

パートナーセッションでは、コムチュア、日本マイクロソフト、AWSが登壇し、SASプラットフォームの活用、クラウド・AI基盤、データ活用高度化に関する取り組みや知見が共有されました

Snackable Tech Noon

Data&AIに関わる皆さま向けのライトニングトークセッションを開催しました。さまざまなバックグラウンドを持つ登壇者が、最新のSASプロダクトやOSSツール、分析・開発現場のリアルな事例を短時間でシェアする形式で、気軽に知見を深めながら技術仲間とのつながりも広がる時間となりました。

オープニングはSAS Japanの高橋柊が務め、データサイエンティストの河野貴文氏、TOYO TIRE株式会社の田原裕士氏、イーピーエス株式会社の森岡裕氏、株式会社ELYZAの藤田登氏、株式会社マーブルの牧野慎吾氏、株式会社りそなホールディングスの守時義晶氏、株式会社Freewillの開米雄太氏、株式会社WorkXの長谷川大地氏の順に登壇しました。

招待制イベントWomen’s Initiatives Network(WIN)

データ活用・アナリティクス領域で活躍する女性リーダーが集い、経験や知見を共有するとともに、参加者同士の交流を深めるネットワーキングの場となりました。矢田 麻衣子氏(株式会社三井住友銀行)が登壇しました。

ブレイクアウトセッション:業界ごとの意思決定の再設計

午後のブレイクアウトセッションでは、「銀行」「保険・地域金融機関」「ライフサイエンス」「公共」「流通・小売・製造」の5つの業界別トラックを展開しました。Japan Keynoteで掲げた意思決定の再設計を、各業界の具体的な課題とユースケースに落とし込む構成となりました。

トラック1:銀行向けデータ & AI活用最前線

AI主導の意思決定が銀行ビジネスをどのように進化させているかを、リスク管理、不正対策、財務・コンプライアンスといった主要領域のアーキテクチャの考え方や優先事項とともに解説するトラックです。銀行を「守り」「運営し」「成長させ」「進化させる」ためのAI活用の全体像が大きく以下の4つのパートで示されました。

  • Banking in AI Era ~新たな潮流、そして銀行のリーダーと実務家が挑むべき課題
  • 新たなビジネスニーズへの対応 ~AIによる意志決定インテリジェンスでAIFULのレジリエンスを強化
  • りそなホールディングスにおけるAML高度化への挑戦~Agentic AIによる次世代AML実現への道
  • 金融AIパラダイムシフト~Human-out-of-the-loop時代に求められるAIガバナンスとIT要件

トラック2:保険・地域金融機関向けデータ&AI活用トラック

保険・地域金融機関トラックでは、価格競争の激化やリスクの不確実性、透明性への要求の高まりといった環境変化の中で、迅速な意思決定と強固なガバナンス、持続的な収益成長をAIがどう支えるかが取り上げられました。

トラック3:ライフサイエンスにおけるSAS × オープンソース × AI

ライフサイエンストラックでは、SAS Viyaによる統合データ管理やマルチ言語解析(SAS/R/Python)、RAWデータからCDISC変換に至るAI活用基盤など、信頼性と柔軟性を両立した「実運用可能なAI活用」を紹介しました。

トラック4:統合的データ活用とAgentic AIが変える公共の意思決定

公共トラックでは、データ活用から意思決定までを一体で支える実践像をテーマに、行政におけるAgentic AIの実装展望、自治体の税務効率化と給付の最適化、多様化する犯罪に挑むデータ統合・AI活用、医療保険者業務における支払適正化の高度化、海事・港湾分野の経済安全保障とアナリティクスなどのユースケースを紹介しました。

トラック5:流通・小売・製造業界におけるAIエージェント活用最前線

流通・小売・製造トラックでは、需給計画や価格戦略、生産最適化における意思決定の再設計と高度化をテーマに、サプライチェーンの意思決定を変革するAIエージェント活用、データとAIが変える価格戦略の最前線、設備状態監視における製造業の意思決定の進化、LLM・RAG・MCPで進化する製造業のAI活用、CopilotとMCPによる意思決定の加速について、それぞれ発表しました。

Innovation Hub・ネットワーキングセッション

会場では、Innovation Hubとパートナー展示エリアも終日にぎわいました。SAS Hackathon Boot Campでは、グローバルで展開する「SAS Hackathon」に向けて、多くの方に、実際に手を動かしながら体感いただけるハンズオン形式で実際の業界ユースケースに沿ってSAS製品を体験いただきました。

業界別のインダストリ・ブースでは、金融・社会公共・ヘルスケア/ライフサイエンス・流通製造の各分野のユースケースを紹介しました。パートナーブースやSASブースも含め、多くの皆さまに、データとAIによる意思決定の変革を“触って・感じて・話して・ひらめく”機会としてご活用いただきました。

18時からのネットワーキングセッションでは、1日を通じて得られた学びや気づきを共有しながら、参加者同士、SAS、パートナーとの交流を深めていただきました。また、米国SAS本社創立50周年、SAS日本法人創立40周年を祝う企画が催されました。あわせて、SAS Japan Customer Value Awardの表彰式を実施しました。

最後に

SAS Innovate on Tour Tokyo 2026は、「意思決定の再設計」という共通のテーマのもと、グローバルのビジョンから日本のお客様・パートナーの実践事例、そして現場の技術者の知見までを一つにつなぐ一日となりました。

 

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